2024年6月1日(土)第24回目の短編小説読書会を行いました。
今回も予想を上回る数の方から申し込みいただき、2部制で行う予定でした。
しかし、当日になるとさまざまな事情で少しキャンセルが出てしまいました。仕方ない部分はあるのですが、このまま参加者が増え続けると今後の運営も考えないといけないな、と思ってしまいます。
それだけこの読書会が多くの人に興味を持っていただけているという意味で、ありがたいことではあるのですが…。
自己紹介の後は初読の感想から議論を始めていきます。
今回は普通というか、よくわからないという人が多かったかもしれません。
物語は、みずきがある日突然自分の名前が思い出せなくなるという、不思議な現象が起きたところから始まります。
病気があるわけでもない。仕事や結婚生活が嫌なわけでもない…。
原因を探しに、品川区役所の心の相談室に駆け込んでいくが…
ここから物語が展開していくわけです!(詳しくは各自読んでください)
ネタバレしてしまうと、自分の名前が思い出せなくなった原因は名前を盗まれたからなのですが、ここでなぜ猿がいきなり出てくるのかわからない人が多かったようです。
いろいろと議論しましたが、三猿がヒントになっているのではないか、と思われます。
三猿というのは日光東照宮のお猿さん(「見ざる・言わざる・聞かざる」)が有名ですね。
(写真は2017年筆者が旅行時に撮影したもの)
見ざる:悪いものを見ない
聞かざる:悪い言葉を聞かない
言わざる:悪いことを言わない
つまり、素直な心のまま成長しなさいという仏教用語なんだそうです。
物語に登場する猿は、心の闇を抱えた人の名前を盗むという習性がありました。
みずきの場合、今まで一度も家族に愛されたことがないという心の闇に気づかないふりをして生きてきました。
「本当にそのとおりなんです。このお猿さんの言うとおりです。そのことは私にもずっとわかっていました。でもそれを見ないようにしていまして、今まで生きてきたんです。目をふさいで、耳をふさいで。お猿さんは正直に話をしているだけです。だから、許してあげて下さい。何も言わずに、このまま山に山に放してあげて下さい」(『品川猿』・太字はブログ筆者による)
この会話文中で、太字のところは明らかに重複です。そしてそれをわざわざ繰り返しているということは、それだけ重要な意味を持っていると考えて良いと思います。
見ざる:見るべき現実から目を逸らす
聞かざる:心の声に耳を傾けない
言わざる:自分の意見を主張しない
このようなみずきの生き方とかけているユーモアだと解釈しています。そして、村上春樹さんはそのようなシャレを好んで使う方のようにも思います(そんなに数多く読んできたわけではありませんが…)。
皆さんはいかが思われますか?
今回も楽しい読書会でした。
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次回読書会はが6月17日(月)に行います。
次回の参加もお待ちしています♪