【報告】第22回 短編小説読書会(安部公房『デンドロカカリヤ』)①

2024年4月16日(火)第22回目の短編小説読書会を行いました。

 

今月の読書会は申し込みが多く、2回に分けて行います(両日ともに定員に達したため募集は終了しています)

今回はその1回目。参加者は新規4名を加えた7名で行われました。1人欠席が出ましたが、それでも普段から考えるとまあまあ多い方です。

 

今回の課題分は安部公房『デンドロカカリヤ』。

選んだ理由はいくつかあるのですが、

①作者の安部公房が今年生誕100周年を迎えること

②主人公のコモン君が変身したとされる「デンドロカカリヤ」が小石川植物園にあり、みんなで見に行きたいため(※こちらは後日、別記事にて案内します)

が大きな理由です。


 いつものように自己紹介を済ませた後、感想や評価を語り合います。

 

全体的に、良くも悪くも何が言いたいのかわからないという意見が多くありました。

まあ、安部公房はわかりそうでわからない、ふわふわした感じを楽しむものだと個人的には思うのですが…。

 

コモン君という主人公がデンドロカカリヤという植物に変身してしまうという、話の筋としてはただそれだけなのですが、巧みな構成や描写によって味わい深い作品に仕上がっていると思います。

 

議論になったのは、「最後、館長はなぜ笑ったのだろう」という作品の核心に迫る問いです。つまり、「作品における植物化の意味」を考える問いです。

答えが明確にあるわけではありませんが、ヒントになる部分はいくつか書かれています。中でも大きいのは、コモン君は植物化を「プロメテウスの火を消す行為」と捉えているところにありそうです。

 

プロメテウスはよく知られた通り、ギリシャ神話に出てくる神で、天界から火を奪い人間界にもたらした人物として知られています。人類は火を使うようになったことで便利な暮らしを手に入れた一方、戦争や争いの道具としても使われ、必ずしも幸福になったとは言い難い側面もあります。

このような事情から「プロメテウスの火」とは強大な科学技術、特に原子力の比喩として使われているのです。

 

植物化とは、そういう強大な力を無力化する作戦のようにも見えますが、いかがでしょうか。考えすぎかも?

 

今回も楽しい読書会でした。第2部も楽しみですね。

 

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次回読書会の日時は未定ですが、課題文は先に決まりました。

次回課題文:『ひよこトラック』(小川洋子

青空文庫にはないので、図書館等で探して読んできてください。

 

文庫本では、コチラが値段も手頃で入手しやすいかと思います。

 

次回の参加もお待ちしております。